NGC

CASE STUDY

vol.

02

SHOW視聴価値を高める

未来エネルギーの研究を支える『多面体立体視システム』を導入。

大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 核融合科学研究所 様

地球のエネルギー問題を解決する有効な方法の一つとして、世界中で研究が進められている「核融合発電」。岐阜県土岐市にある「核融合科学研究所」は、安全で環境に優しいこの次世代エネルギー「核融合発電」の実現をめざし、大学共同利用機関として国内外の大学・研究機関と共に研究を進めていらっしゃいます。1997年に、科学研究目的として日本で初めてバーチャルリアリティ(以下VR)による「多面体立体視システム」を導入されましたが、弊社はそのお手伝いをさせていただきました。またそれ以来、機器の保守とソフトウェアのサポートを担っています。日本最先端の核融合発電研究の現場で、私どもが納めた多面体立体視システムはどのように使われているのか?それによって、核融合発電は今後どのように進んで行くのか?ご担当であるヘリカル研究部の大谷寛明准教授に話を伺いました。

日本初!科学研究のためのバーチャルリアリティ装置。

左から、核融合科学研究所 大谷様、弊社戸刈(以下、敬称略)

どのような経緯で「多面体立体視システム」を導入したのでしょうか?

大谷

核融合科学研究所では、大きく分けて3つのプロジェクトを走らせています。1つはプラズマを閉じ込めるための「プラズマ実験」(※1)。2つ目は核融合プラズマを閉じ込めるための物理や機構を明らかにするためにスーパーコンピューターを使用して行う「シミュレーション研究」(※2)。3つ目が「核融合炉の設計」(※3)です。私はこの3つのうち、「シミュレーション研究」のグループに所属しています。

戸刈

プラズマのシミュレーションというのは三次元の世界になりますから、二次元のディスプレイでは解析に限界があるんですよね。そこで、1997年にVR装置の導入のお手伝いをさせてもらったのが、弊社と核融合科学研究所様とのおつきあいの始まりです。実は、VR装置を科学研究のために日本で初めて導入したのは核融合研さんなんです。

大谷

ええ。うちの研究所が最初です。用途に関係なく、多面体立体視システムそのものを入れたのも日本で2番目と、かなり早かったですね。

戸刈

この「多面体立体視システム」は、正面・左・右・床の4面で囲んだ空間に表示した映像を、専用のメガネを装着することで、立体的に見ることができるというもの。実感としては、ホログラフィのようなものですね。サイズは3m×3m×3mと大きいですから、例えば車の映像を映し出せば、あたかもその車が目の前にあって、そのまま乗れてしまうようなリアリティを感じることができます。

(※1)プラズマを閉じ込める方式としては「トカマク型」と「ヘリカル型」の2つがある。トカマク型はロシアで考えられた方式で、フランスのカダラッシュに建設中の国際熱核融合実験炉(ITER)が採用する方式。ヘリカル型は、コイルをねじって、そのねじれた磁場で閉じ込める方式で、日本生まれ。核融合科学研究所で行っているのは「ヘリカル型」の方式による実験で、世界で初めて超伝導コイルを採用した大型装置を用いている。

(※2)プラズマを閉じ込める技術や装置の改善をするためのシミュレーションモデルをつくり、スーパーコンピュータに計算させて、中で何がおこっているかを研究する。またプラズマを閉じ込めるための真空容器の材料が、プラズマの種類によってどう損耗するかなど、材料の研究にも活用している。

(※3)まずは実験炉。その後、実証炉、商用炉と進む予定。

 

 

見えない磁場やプラズマの様子を“直感的”に再現。

具体的にこのシステムをどのように研究に用いているのでしょうか?

大谷

そもそも核融合発電は、海水の中にふくまれる重水素とリチウムという物質を原料に核融合反応を起こし、プラズマを燃やして発電するというもの。そのプラズマを閉じ込めるのに、強力な磁石でつくる「磁場」のカゴを用いるのですが、磁場そのものを見ることはできません。そこで、スーパーコンピュータを使ってシュミレーションし、磁場の様子を再現するのですが、その際、多面体立体視システムを使うことで、磁場の構造やその中で動くプラズマ粒子の様子を、より直感的に見ることができます。

戸刈

二次元的なモニターだと、粒子がどう飛んでくるのかが非常にわかりづらい。ところがこの多面立体視システムは三次元なので、磁場を横から見たり、上から見たり、中に入り込んで見たりといったことが可能です。また、プラズマに音はないのですが、立体音響の装置を入れているので、いまどこを飛んでいるかを耳で感じることも可能。まさにVR(バーチャルリアリティ)です。

大谷

ゲームなどにも使われている1人用のVR装置と違うのは、1つの映像を皆で見ることができるということ。核融合研は共同研究機関ですから、違う大学の先生達が共同で研究できる環境でないといけません。

戸刈

1人用のVR装置だと使用中は周りが見えなくなってしまいますが、この多面体立体視システムなら、複数人で同じ映像を見つつ、議論したりすることも可能ですからね。

大谷

また近ごろは、スタッフでも実験装置の中に入れないようになってきており、外から観察するだけになっています。しかし、このシステムを使えば擬似的に中に入って観察することができるので、非常に助かっています。

戸刈

見えないものを可視化することができるわけですから、実験を第三者にわかりやすく説明することにも役立ちます。先生、研究所では見学者の方のための疑似体験装置としても使っていらっしゃるんですよね?

大谷

ええ。私たちがどんな研究をしているのか、一般の方に知ってもらうのも、大事な仕事ですから。

 

装置のチューニングから研究室の“断捨離”まで。

多面体立体視システムはエヌジーシー独自の技術なのですか?

戸刈

もともとは、米国のイリノイ大学が開発したもの。それを日本に輸入して、販売したのがうちの親会社の日商エレクトロニクスです。私は1997年の導入時から、機器の保守とソフトウェアのサポートを担当してきました。ですからこのシステムとのは20年の付き合いになりますね。

大谷

私とはかれこれ8〜9年になりますか?

戸刈

そうですね。お世話になっております(笑)。近ごろは大谷先生以外にも、この装置を使いたいという研究者の方が増えてきて、ありがたく思っています。そうした方々の研究目的に応じて装置をチューニングしたり、見学者の方向けにエンターテイメント性に特化したソフトをつくったりもしています。

大谷

見学者向けのソフトは、金属面が光って見えたり、見る人を惹きつけなければいけません。研究者はそういう“演出”は不要ですので、すべてお任せしています。

戸刈

実験装置自体もバージョンアップや変更がこれまでありましたので、それに対応するソフトウェアの切り替えなども行ってきました。

必要に応じてソフトウェアの開発もするのですか?

戸刈

自社ではやっていません。開発しているところを探してきて、ご提案しています。

大谷

我々も可視化用のソフトを自前で作っているのですが、うまくいかないところもあって…そういう時は戸刈さんを通じて色々教わっています。あと、研究室の整理とかも…。いわゆる“断捨離”ですね。

戸刈

研究室も全部弊社が設計したんですよ!間仕切りとかゾーニングとか。そういうのもあって、整理整頓のお手伝いもしているというわけです。

大谷

まさにトータルプロデュースということで、大変助かってますよ。

 

実用化のためには
リアルタイムでのシミュレーション能力が必要。

今後の課題や目標はありますか?

戸刈

そうですね、実験の可視化のクオリティを上げることでしょうか。映像の精度が上れば、より細かいところが見えたりするので。あと、最近はグローブをつけて、視覚聴覚だけでなく“感触”まで再現しようという試みも行っています。

大谷

私としては、より現実的な対応力を高めてほしいですね。

戸刈

と言いますと?

大谷

将来、核融合炉をつくるとしたら、大きさはサッカー場くらいのサイズになります。部品もこの部屋よりもっと大きい、重さにして4トンとかそういうレベルのものもあります。それを0.5mmの精度で取り付けたり、外したりしなければいけないんです。すると、核融合炉をつくるための実験を、実物大の装置を作って行うなんてことは、現実的に不可能になる。

戸刈

確かに。だったら本物が作れてしまいます。

大谷

なので、VRでとことんシミュレーションする必要があるんですね。ロボットが部品を持ち上げたりするときに、アームがたわんだり、振動で壊れてしないか?それが実際に起こったら大変ですから、事前にVRで検証して改善し続けなければいけない。それを“リアルタイム”でやれたらいいなと思うわけです。

戸刈

となると、スパコンの計算能力も問題ですよね。いまのスパコンでは、リアルタイムでのシミュレーションなんて到底無理ですから。

大谷

そうなんですよ。現状は計算に1日、下手すると1ヶ月かかりますから。正直、無理難題ではあるんですが、いつかそうなってくれたらいいなと思っています。

 

地球に“太陽”を作る壮大な実験。
宇宙の謎も解明されるかも?

核融合の研究というのは、発電が最終目的なのでしょうか?

戸刈

そうなりますか?先生。まあ、簡単に言ってみれば、海水を原料にして太陽を地球に作ろうという研究ですから、壮大ですよね。

大谷

確かに大目標は発電ですが、例えば宇宙の見えている物質の99.999%はプラズマで、太陽の爆発現象やブラックホールのジェットもすべてプラズマ現象ですから、核融合炉とそれに伴うプラズマ研究で得られた理論や法則は、宇宙研究にもフィードバックできるはずです。

その肝心の核融合炉はあとどれくらいで完成の予定ですか?

大谷

大きな発電所を作ろうとしたら、50年とかのレベルです。まあ、一般の人にとってみたら気の遠くなるような話ですが、いまの高校生が定年退職を迎えるぐらいまでに完成すれば…と高校生の見学では話すことが多いですね(笑)

戸刈

それくらい難しい技術ということですよね。でも成功の暁には、地球上にほぼ無限にある海水だけを原料に、究極のクリーンエネルギーができるのですから、先生には大いに頑張っていただきたいと思っています。

大谷

そのためには、この「多面体立体視システム」に、もっともっと働いてもらわないといけないですね。

戸刈

もちろん、メンテナンスはお任せください!弊社でご協力できることは全力で行わせていただきますので、なんなりと!

大谷

今後ともよろしくお願いします!